【どこの国?】エクレアの秘密【エクレールとの違いは?】

エクレアを紹介するフランスのパティスリーの店員さん ヨーロッパ

フランスの伝統菓子であるエクレア

シュー生地で作られた細長い形状と様々なフレーバーのクリームやトッピングの組み合わせが特徴的なこのお菓子は現代ではクラシックな定番から革新的なバリエーションまで多様な進化を遂げています。

今回はエクレアの起源からその特徴、「エクレール」と何が違うの?といったことまで、由来などの基礎的なことから発展まで詳しく紹介できたらと思います。

エクレアはどこの国のケーキ?

フランスの洋菓子エクレア

エクレアはフランス発祥の代表的な洋菓子です。その起源は19世紀前半にさかのぼり多くの資料によればフランスの有名なパティシエであるアントニン・カレームによって考案されたとされています。カレームはフランス料理の近代化に大きく貢献した人物でエクレアもその革新的な創作の一つでした。

当時のフランスでは王室や貴族のために豪華で洗練された菓子が次々と生み出されていました。エクレアもそうした背景の中で誕生しその後パリの高級パティスリーで提供されるようになり徐々に一般にも広まっていきました。

エクレアという名前の由来

「エクレア」(éclair)というフランス語は「稲妻」や「閃光」を意味します。この名前の由来については諸説ありますが最も有力なのは「食べる速さが稲妻のように速い」という説です。あまりにも美味しくてあっという間に食べてしまうことからこのような名前が付いたといわれています。

また艶やかなチョコレートのグラサージュ(艶出し)が光を反射して稲妻のように輝くことから名付けられたという説もあります。いずれにしてもこの名前はエクレアの魅力を端的に表現しているといえるでしょう。

エクレアの特徴と作り方

基本的な構成要素

エクレアは基本的に以下の要素から構成されています。

シュー生地。小麦粉、バター、水、卵を使った生地で焼くと中が空洞になる特徴があります。エクレアの場合は細長い棒状に絞り出して焼き上げます。

フィリング。伝統的にはクレームパティシエール(カスタードクリーム)が使われますが現代ではホイップクリーム、チョコレートクリーム、フルーツクリームなど様々なバリエーションがあります。

トッピング。最も一般的なのはチョコレートのグラサージュですがキャラメル、コーヒー、フルーツ系のグラサージュなども人気です。

伝統的な作り方

エクレアの伝統的な製法は以下の工程で行われます。

まずシュー生地を作ります。鍋に水とバターを入れて沸騰させ小麦粉を一気に加えて練り上げます。火から下ろして少し冷ました後卵を少しずつ加えながら滑らかな生地にします。

次にこの生地を絞り袋に入れ細長い棒状に絞り出して天板に並べます。オーブンで焼き上げると内部に空洞ができた軽い生地に仕上がります。

焼き上げたシュー生地が冷めたら底に小さな穴をあけてクリームを詰めます。伝統的にはバニラ風味のクレームパティシエールが使われることが多いです。

最後に上面にチョコレートやフォンダン(砂糖の艶出し)をかけて完成です。クラシックなエクレアではチョコレート、コーヒー、キャラメルの3種類が定番とされています。

エクレアとエクレールの違い

スペルと発音の違い

エクレアとエクレールについて混乱がある理由は発音とスペルにあります。

フランス語では「éclair」(エクレール)と表記され実際のフランス語の発音は「エクレール」に近いです。しかし日本では一般的に「エクレア」と呼ばれることが多くメニューやパッケージでもそのように表記されていることが一般的です。

この違いは言語の音韻体系の違いから生じています。フランス語の「r」の発音は日本語にはない音であり日本語に取り入れる際に「ア」の音に置き換えられることが多いのです。また欧米から日本に伝わった際の経路(英語圏を経由した場合など)によっても発音や表記が変化することがあります。

ということで、実質的な違いはありません

菓子としてはエクレアとエクレールは同一のものを指しています。どちらの名称もフランス発祥のシュー生地を使った細長い形状の菓子で中にクリームが詰められ表面にグラサージュがかけられたものを指します。

日本語での表記の揺れはありますがフランス本国では「éclair」の一つの表記しかなく実質的な違いはありません。どちらの名称でも同じ美味しいフランス菓子を意味していると理解して問題ないでしょう。

Q&A: エクレアについてよくある質問

エクレアとシュークリームの違いは何ですか?

基本的な材料は同じですが形状が大きく異なります。エクレアは細長い棒状であるのに対しシュークリームは丸い形をしています。また伝統的なエクレアはグラサージュ(艶出し)を施すことが多いですがシュークリームは粉砂糖をかけるだけのことが多いです。

エクレアの保存方法と賞味期限は?

エクレアは生クリームやカスタードを使用しているため冷蔵保存が基本です。一般的に購入後は当日か翌日までの消費が理想的です。市販のエクレアでは保存料が使われている場合もありますがそれでも冷蔵で2〜3日程度が目安となります。シュー生地が湿気で柔らかくなるためなるべく早めに食べるのがおすすめです。

家庭でエクレアを作る際のコツはありますか?

シュー生地作りでは温度管理が重要です。バターと水を沸騰させた後一度火から下ろして少し冷ましてから卵を加えることで卵が固まらず滑らかな生地になります。またオーブンの温度も重要で最初は高温(200℃程度)で焼き始め膨らんだら温度を下げて(170℃程度)中までしっかり焼くのがコツです。

世界各国でエクレアにどのようなバリエーションがありますか?

フランスでは伝統的なチョコレート、コーヒー、キャラメル味のほか現代では抹茶やパッションフルーツなど国際的な風味も取り入れられています。日本では和風テイストの抹茶や桜、ゆず味なども人気です。アメリカではボリューム感のあるトッピングやフィリングを使ったバージョンも見られます。各国の食文化に合わせたアレンジが楽しまれています。

世界各国のエクレア文化

フランスのクラシックなエクレア

フランスではエクレアは「パティスリー・クラシック」(伝統的な菓子)として広く親しまれています。パリの老舗パティスリーでは伝統的なチョコレート、コーヒー、キャラメルの3種のフレーバーが今でも定番として提供されています。

フランスの伝統的なエクレアではシュー生地の焼き加減やクレームパティシエールの質、グラサージュの艶やかさなど細部へのこだわりが重視されます。職人の技術を示す基本的な菓子としてパティシエの腕前を測る基準にもなっているのです。

日本におけるエクレアの受容と進化

日本では明治時代以降西洋の菓子文化が導入される中でエクレアも伝えられました。当初は高級洋菓子店でのみ提供される特別なお菓子でしたが現在では一般的なケーキ店やパン屋さらにはコンビニエンスストアでも手に入るポピュラーなスイーツとなっています。

日本独自の発展としては季節の素材を取り入れた和風エクレア(抹茶、桜、ゆず、黒ごまなど)の登場が挙げられます。また見た目の美しさを重視した装飾的なエクレアも日本では人気があります。エクレアブームの際にはアートのように美しいデコレーションを施した「デコエクレア」なども注目を集めました。

現代における創造的なエクレア

近年世界的に見ると伝統的なエクレアにとらわれない革新的なアプローチが増えています。パリの「レクレール・ド・ジェニ」のようなエクレア専門店は伝統的な形状を保ちながらも現代的なフレーバーやデザインでエクレアを再解釈しています。

またエクレアの形状やサイズにも変化が見られミニエクレア、エクレアケーキ(複数のエクレアを組み合わせたケーキ)さらには円形や四角形のエクレアなど従来の概念を超えた創作も登場しています。食材においてもグルテンフリーや低糖質など現代の食のトレンドに対応したバージョンも開発されています。

家庭で楽しむエクレア

基本的なエクレアレシピ

家庭でもエクレアは意外と作りやすい菓子です。以下に基本的なレシピを紹介します。

【材料(約8個分)】

シュー生地用: ・水 100ml ・バター 50g ・小麦粉 60g ・卵 2個 ・塩 ひとつまみ

クレームパティシエール用: ・牛乳 250ml ・砂糖 50g ・卵黄 2個 ・小麦粉 20g ・バニラエッセンス 少々

グラサージュ用: ・チョコレート 100g ・生クリーム 50ml

【作り方】

シュー生地を作る。

鍋に水、バター、塩を入れて火にかけ沸騰したら火を止めます。 一気に小麦粉を加えて木べらで混ぜ再び弱火にかけながらしっかり練ります。 鍋底に薄く生地が付く程度になったら火から下ろし少し冷まします。 溶きほぐした卵を少しずつ加えそのつどよく混ぜます。

成形と焼成。

絞り袋に生地を入れオーブンシートを敷いた天板に10〜12cm程度の長さで絞り出します。 200℃に予熱したオーブンで約15分その後170℃に下げてさらに15分程度焼きます。 焼き上がったらオーブンの扉を少し開けて庫内で冷まします。

クレームパティシエールを作る。

鍋に牛乳を入れて温めます。 別のボウルに卵黄と砂糖を入れて白っぽくなるまで混ぜ小麦粉を加えてさらに混ぜます。 温めた牛乳を少しずつ加えながら混ぜ全体を鍋に戻して中火にかけます。 とろみがつくまでかき混ぜバニラエッセンスを加えて火から下ろします。 ラップをぴったりと表面に貼って冷やします。

組み立て。

冷めたシュー生地の底に小さな穴をあけ冷やしたクリームを詰めます。 チョコレートと生クリームを湯煎で溶かしエクレアの上面にかけて冷やし固めたら完成です。

アレンジバリエーション

基本のエクレアから派生させたアレンジも楽しめます。

フレーバーアレンジ。クレームパティシエールにココアパウダーを加えてチョコレート味に、コーヒーエキスを加えてコーヒー味に、抹茶パウダーを加えて抹茶味にするなど様々なバリエーションが可能です。

トッピングアレンジ。チョコレートグラサージュの上に刻んだナッツ、ドライフルーツ、カラフルなスプリンクル、食用金粉などをトッピングすると見た目も華やかになります。

フィリング。伝統的にはクレームパティシエール(卵黄、砂糖、牛乳、小麦粉などで作る濃厚なカスタードクリーム)が使われますが現代ではホイップクリーム、チョコレートクリーム、フルーツクリームなど様々なバリエーションもあります。

エクレアの文化的影響と現代的展開

高級菓子からポピュラースイーツへ

エクレアは元々フランスの貴族や富裕層のための高級菓子でしたが時代とともに一般大衆にも広まりました。特に20世紀後半からは世界各国で手頃に楽しめるスイーツとして定着しています。

現在では高級パティスリーの芸術的なエクレアからファストフード的に楽しめるカジュアルなエクレアまで様々な価格帯と品質のエクレアが共存しています。この多様性がエクレアの魅力の一つとなっており誰もが自分の好みや予算に合わせて楽しめるようになっています。

SNS時代におけるエクレアの人気

視覚的にも美しいエクレアはInstagram(インスタグラム)などのSNSの普及とともに新たな注目を集めています。特に革新的なデザインやカラフルなバリエーションは写真映えするスイーツとして若い世代にも人気です。

エクレア専門店やパティシエたちもSNSでの発信を意識した独創的なエクレアを次々と生み出しています。見た目の美しさだけでなく斬新な味の組み合わせや季節感の表現なども重視されエクレアは常に進化し続けているのです。

健康志向とエクレアの未来

近年の健康志向の高まりに応じてエクレアにも新しい試みが見られます。低糖質タイプ、グルテンフリーのシュー生地を使ったもの、植物性の材料だけで作るヴィーガン対応のエクレアなど多様な食のニーズに対応した商品が開発されています。

また栄養価の高い素材(スーパーフード、高タンパクな素材など)を取り入れたエクレアも登場しています。古典的なフランス菓子であるエクレアが現代の食のトレンドと融合しながら新しい形で受け継がれているのは興味深い現象です。

まとめ

フランスの伝統菓子として誕生したエクレアはその魅力的な見た目と豊かな味わいで世界中に愛好者を増やしてきました。

シュー生地で作られた細長い形状、クリームのフィリング、艶やかなグラサージュという基本構造を保ちながらもエクレアは時代とともに多様な進化を遂げ、伝統的なフレーバーから革新的なデザインまでエクレアの世界は奥深く創造性に満ちたものといえるのではないでしょうか。

そして実は家庭でも作りやすい菓子であるエクレア。基本をマスターすれば様々なアレンジを楽しむことができることでしょう。