イタリアのカフェ文化
先生:おはようございます。今日はイタリアのカフェ文化についてお話ししましょう。
学生:なんとなくイタリア人はコーヒーが好きだということは知っています。
先生:イタリアのカフェ文化は、コーヒーだけでなく、雰囲気や社会的なつながり、さらにはある種の儀式も重要な要素です。そもそも、コーヒーがイタリアに伝わったのは16世紀のことです。
学生:じゃあ歴史は500年もないんですか。なぜその頃飲まれ始めたんです?
先生:1592年から1605年まで在位したローマ教皇クレメンス8世の影響です。彼の在位中、コーヒーはヨーロッパでは比較的新しい飲み物で、特に聖職者の間では懐疑的な目で見られ、”イスラム教徒の飲み物 “と見なされていました。
学生:イスラム教徒の人はコーヒー大好きですからね。それはわかります。
先生:悪魔の飲み物であるとか、コーヒーは破門されるべきだという意見さえあったんですよ。
学生:それはわからないですね。ただの飲み物の話ですよね、怖いです。
先生:しかし伝説によると、クレメンス8世がこの飲み物を試飲し非常に気に入ったため、ローマ教皇庁に認可を与えたんです。
このお墨付きが、ヨーロッパ、特にイタリアでコーヒーが広く受け入れられ、人気を博すきっかけとなりました。そして後にはエスプレッソ文化が発展することになるわけです。
学生:ローマ教皇と意外な登場人物が鍵になっていましたが、日本で副将軍が中国からのラーメンを食べたのが始まり、みたいな変わったきっかけということですね。
先生:え、それが似ているのかわかりませんが。とりあえず話をすすめますね。
17世紀後半、イタリアの東方貿易の玄関口であるベネチアで最初のコーヒーハウスが出現しました。
カフェは社交の場、知的な議論の場、そして政治活動の拠点となりました。1720年にオープンしたヴェネツィアの有名なカフェ・フローリアンは、カサノバやゲーテなどの著名人を迎え入れています。
学生:ああ!イタリアへのヨーロッパ内の観光ブームがあったころですね。イギリスの貴族の子弟から多くの芸術家がイタリアに向かったという。
カフェメニューの種類
学生:コーヒーの種類についても教えてください。
先生:コーヒーのスタイルにはそれぞれ名前があり、飲むのに適した時間帯があります。
エスプレッソは、小さいけれど強いコーヒーのショットで、特に朝や食後に、バールで素早く飲むのが一般的です。
ヨーロッパ全体に言えるかもしれませんが、普通のレストランでも食事の最後に日本の酒を飲むようなとても小さなカップに強烈な濃さのエスプレッソを飲むのは定番ですね。
また、カプチーノはエスプレッソにスチームミルクとフォームを加えたもので、通常、朝食時に楽しまれます。食後に飲むのは、ちょっとだけおかしな目で見られるかもしれませんね。
学生:そうなんですか。
先生:マナーではないのですからそんなに気にしなくても平気ですけどね。
エスプレッソにミルクを少し入れて飲むカフェ・マキアートも人気です。エスプレッソにグラッパ、サンブーカ、ブランデーなどのお酒を加えて、修正、をする修正したカフェ、カフェ・コレットもありますね。
学生:いろいろな種類のコーヒーを試すだけで、一日中過ごせそうですね。
先生:そうですね、「カフェラテ」「カフェアメリカーノ」「カフェルンゴ」など、数え上げればきりがありません。
学生:カフェラテのあとの二つはなんですか?
先生:カフェ・アメリカーノは、第二次世界大戦中にイタリアに駐留していたアメリカ兵が、現地のエスプレッソが強すぎて口に合わないと感じたことから生まれたコーヒーですね。
強烈なエスプレッソを薄めるため、彼らはお湯を加え、母国で慣れ親しんだドリップコーヒーのような飲み物に変えたんです。
学生:アメリカンコーヒーがあるのは日本だけ。アメリカにアメリカンコーヒーはない、と聞いたことがありますがカフェアメリカーノなんてのがあるんですね。
それにしてもお湯を加えて薄めるなんてイタリア人に怒られそう。美味しいんですか?
先生:基本的に濃いエスプレッソのショット1、2杯にお湯を加えたもので、エスプレッソのニュアンスの一部を残しながら、ドリップコーヒーに似た薄さの風味の異なる飲み物になります。
マイルドなエスプレッソということで一定の需要がありますよ。
日本でもアメリカンコーヒーという薄いコーヒーがありますし人によって味覚は様々ですからね。
学生:確かに。カフェルンゴはどんなコーヒーです?
先生:イタリア語で「長いコーヒー」を意味するカフェ・ルンゴもエスプレッソベースの飲み物です。
学生:何が長いんですか?長細いコーヒー豆??
先生:違います、カフェ・ルンゴでは、通常のエスプレッソ・ショットよりも長い時間エスプレッソを抽出するんです。
こうすることでより多くの水がコーヒー粉を通過するようになる。その結果、アメリカーノよりもやや強いコーヒーが出来上がりますが、通常のエスプレッソほど強くはないものができあがるのです。また、抽出時間を長くすることで、さまざまな風味が引き出されます。
学生:マイルドなエスプレッソだということですね?
ドルチェ・ファール・ニエンテ
先生:そういうことです!さて、忘れてはならないのはイタリアのコーヒーは単に飲み物というわけではないということです。
社会的な儀式でもあり、1日の休憩であり、友人や同僚とリラックスしておしゃべりする時間なのですよ。
学生:飲み物を飲みながらくつろぐというのはほとんど世界中に見られる文化ですが、イタリアやフランスでは特にコーヒーがそれを担っているのですね。
先生:そうですね、カフェは待ち合わせ場所であったり、社交の場であったり、最新情報を話し合ったり、あるいは「ドルチェ・ファール・ニエンテ」(何もしないことの甘美さ)を楽しむ場所であったりすることが多いですね。
学生:そういう時間は大切ですね。最近の日本の一部のカフェは作業場のようになっていますよ。。
先生:オフィスや学習部屋代わりに長時間使っている人も多いですよね。あれはあれで特色が出ている気がします。批判する人も多いですが高い人口密度で単純に街のスペース不足のしわ寄せがカフェに向かっているのかもしれません。。
イタリアのカフェめし コルネット
先生: イタリアのカフェ文化はコーヒーだけではありません。
多くのカフェでは、ペストリー、サンドイッチ、スナックなど、さまざまなメニューを提供しています。例えば、イタリア版クロワッサンと言われるコルネットはご存知でしょうか?
学生:若干ですが。コーヒーと一緒に朝食に食べることが多いんでしたっけ?

先生:その通りです。コルネットとカプチーノは、イタリアの定番の朝食です。コルネットは「ヴオト」と呼ばれるプレーンなものから、ジャムやクリーム、ヌテラなどが入っているものまであります。
また、午後の遅い時間帯には、お酒と一緒に軽食や小皿料理を楽しめる「アペリティーボ」を提供しているカフェもあります。
学生:楽しそうな習慣ですね!
先生:確かにそうですね。アペリティーボは、夕食前に食欲を増進させるためのものというイメージがありますが、仕事帰りに友人とくつろぎながらおしゃべりする、それ自体が社交の場でもあるのです。
イタリアのカフェの多くは、夜になるとバーに変身し、コーヒーと一緒にカクテルなどのアルコール飲料を提供します。
学生:コーヒーから派生しているのに朝から夜遅くまで万能の場所なんですね。
先生:そういうことです。