西洋料理の基盤を支える「ストック」。日本のだしのように、うま味を凝縮した液体やハーブの束が、シンプルなスープから豪華なソースまでを豊かに彩ります。
特にフランス料理では、ブイヨン(bouillon)、コンソメ(consommé)、ブーケガルニ(bouquet garni)が欠かせない存在です。
これらは骨や野菜、ハーブをじっくり煮出すことで生まれる、透明で風味豊かなエキス。家庭で作れば、日常の食事がプロ級にアップグレードされます。今回は、これらの歴史、作り方、使い方まで網羅的に紹介します。寒い季節に温まる一杯から、特別なディナーまで、ぜひ取り入れてみてください。
ストックにブロス、ブイヨンにコンソメ、まとめてすっきり整理
西洋だしの特徴
西洋のだしは、主に「ストック(stock)」「ブロス(broth)」「ブイヨン」「コンソメ」のカテゴリに分けられます。
ストックは骨やコラーゲンを中心に長時間煮込み、未調味のベースとして使われます。
一方、ブロスは肉をメインに短時間で煮て塩味を加え、飲むのに適した軽やかな液体です。
ブイヨンはこれらの総称で、「煮出す」という意味のフランス語由来です。
そしてコンソメはさらに澄ました上級版で、透明度が高く、洗練された味わいが特徴です。
これらの共通点は、ミルポワ(mirepoix:玉ねぎ、にんじん、セロリ)と呼ばれる野菜の組み合わせと、ハーブのブーケガルニで風味を加えること。骨のコラーゲンがゼラチンを生み、ソースを艶やかに仕上げます。
文化的背景と意義
西洋のだしはフランスのグラン・キュイジーヌ(grand cuisine)のシンボルともいえるものです。17世紀の宮廷料理から生まれ、ルイ14世の時代にスープとして進化しました。
エスコフィエの『Le Guide Culinaire』(1903年)では、ストックがすべてのソースの母体と位置づけられ、料理の階層性を示します。家庭では、残り物の骨や野菜を活用するエコな習慣として、19世紀の農民料理にルーツを持ちます。
文化的には、共有の食事の中心。ポトフ・オ・フー(pot-au-feu)のような煮込み料理で家族を繋ぎ、コンソメはフォーマルディナーのオープナーとして胃を整えます。
アメリカやイギリスでも、ストックは感謝祭のターキーブロスに欠かせず、共同体意識を象徴します。このように、西洋のだしは栄養だけでなく、歴史的な絆を紡ぐ役割を果たしています。
西洋だしの歴史と起源
言葉の起源と発展
ストックは英語で在庫を意味し、料理の基盤として16世紀に登場。
フランス語のbouillon(ブイヨン)は「沸騰させる」から来ており、17世紀のフランソワ・ピエール・ド・ラ・ヴァレンヌの料理本『Le Cuisinier françois』(1651年)でハーブ束の使用が記録されています。
コンソメはラテン語のconsommé(完成された)に由来し、澄ました液体を指します。
中世ヨーロッパでは、保存食として骨を煮る習慣が広まり、ルネサンス期に野菜とハーブを加えて洗練。19世紀の産業革命で缶詰ブイヨンが普及し、家庭料理を民主化しました。
20世紀にはジョエル・ロブションのようなシェフが分子ガストロノミーで再解釈し、現代のエスプーマ(泡)に応用されています。
フランス料理での発展

フランスでは、ストックが母液として位置づけられ、オーグ・ド・ヴォライユ(veal stock)やフュメ・ド・ポワソン(fish stock)が標準化。
第二次世界大戦後の食糧難で、家庭用インスタントブイヨンが登場しましたが、本格派の人たちには今でも手作りが主流です。
伝統的なストックは4〜12時間の低温煮込みが鍵で、風味のレイヤーを築きます。
代表的な西洋だし:ブイヨンとストック
ブイヨンの誕生と特徴
上ですでに述べたようにブイヨンはストックやブロスの総称で、肉や野菜を水で煮出す基本です。
白ブイヨン(unclarified)は軽やかでスープに、ブラウン(roasted)は深い味わいでソースに使われます。歴史的には、古代ローマの煮込みから派生し、フランス宮廷で洗練されました。
ビーフブロスの例として、肉付き骨を使い、トマトペーストで旨味を強化したレシピを紹介します。
ビーフブロスのレシピ(4〜7.5カップ分)
材料
- 肉付きビーフ骨(オックステール、ショートリブなど):4ポンド(約1.8kg)
- キャノーラ油:大さじ2
- にんじん:中3本(約230g)
- セロリ:中3本(約170g)
- 玉ねぎ:中2個(約430g)
- ニンニク:大3片
- トマトペースト:大さじ2
- パセリ:1/2束(茎のみ)
- タイム:8枝
- ベイリーフ:3枚
- ブラックペッパーコーン:大さじ1
- 赤ワインビネガー:1/4カップ
- コーシャーソルト:適量
- 醤油:小さじ1〜3(オプション)
- 氷:1カップ
作り方
- オーブンを450°F(230℃)に予熱。骨を洗い、油を塗って30分ロースト。
- 野菜を粗く切り、骨と一緒に追加ロースト(トマトペーストを加え30分)。
- チーズクロスにハーブを包み、紐で束ねる(ブーケガルニ)。
- 鍋に移し、冷水で覆い、ビネガーを加えて沸騰後、低温で4〜12時間煮込む。アクを取る。
- 濾過し、塩で味付け。氷を加えて急速冷却後、冷蔵で脂肪を除去。
調理のコツ
骨をローストで風味を深め、ビネガーでコラーゲンを抽出。保存は冷凍3ヶ月。カロリー約50kcal/カップ、ナトリウム低めでヘルシー。用途:ビーフシチュー、ライス、ポトフに。
コンソメ:透明の宝石
コンソメの特徴と歴史

コンソメはブイヨンをエッグホワイトで澄ました、宝石のような透明スープ。
フランス語で「完璧に消化される」意味で、19世紀の伝説的な名シェフであるエスコフィエが標準化したものです。
ディナーのスターターとして胃を優しく刺激します。
以下チキンストックベースのクラシック版のレシピを紹介します。
コンソメのレシピ(1ガロン分)
材料
- リーン肉(牛または鶏):適量(細かく刻む)
- 野菜(にんじん、ターンip、リーク、セロリ、ピース、シェルビル):適量
- トマトピューレ:適量
- ハーブ(パセリ、タイムなど):適量
- スパイス(ペッパーコーンなど):適量
- 卵白:適量(軽く泡立て)
- 冷チキンストック:1ガロン
- ソルト、ホットソース:適量
- ガーニッシュ(ブルノワーズ:細かい野菜キューブ、またはシェブー・ダンジュ:細いパスタとパルメザン)
作り方
- 肉、野菜、トマト、ハーブ、スパイスを混ぜ、卵白を加える。
- 冷ストックと合わせ、中火でかき混ぜ、160°F(71℃)でラフト(膜)が形成されるまで加熱。
- 1.5時間弱火で煮込み、ラフトを崩さない。
- 最初の1カップを捨て、チーズクロスで濾過(曇りなら再濾過)。ソルトとホットソースで味付け。
調理のコツ
ラフトを静かに保ち、濾過で透明度を確保。カロリー低く(約20kcal/カップ)、タンパク質豊富。バリエーション:ビーフ版は牛肉使用、トマトコンソメは野菜中心。用途:冷製スープ、ゼリー、フォアグラの付け合わせ。
ブーケガルニ:ハーブの魔法の束
ブーケガルニの歴史
ブーケガルニは17世紀フランス起源で、1651年本に初出。「飾られた花束」の意味で、茎付きハーブを紐で束ね、煮込みに投入。チーズクロス版(sachet)が葉の散らばりを防ぎます。
ブーケガルニのレシピとバリエーション
基本材料
- パセリ茎:3〜4本
- タイム:2〜3枝
- ベイリーフ:1〜2枚
- オプション:ローズマリー、セージ、オレガノ、にんにく、ペッパーコーン
作り方
- ハーブをまとめ、キッチン紐で結ぶ(またはチーズクロスで包む)。
- ストックやシチューに投入、煮込み後取り除く。
バリエーション
- フィッシュ版:ディルとレモングラス追加。
- ベジタリアン版:ローリエとコリアンダーシード。
- モダン版:チリやジンジャーでアジア風。
コツ:新鮮ハーブで風味最大化。用途:ビーフブルギニョンやビーンズスープに。
西洋だしの楽しみ方と現代的アレンジ
様々なバリエーション
無限の可能性。チキンストックはアジアンフュージョンに、フィッシュストックはブイヤベースに。ベジ版はきのこで「肉っぽく」。骨ブロスはスムージーやラーメンにアレンジ。ポトフ・オ・フーでは、ブーケガルニが深みを加えます。
提供方法と食べる場面
熱々でスープとして、または冷製コンソメで夏に。ディナーではガーニッシュ(ハーブや野菜キューブ)で華やか。作り置きは冷凍可能で、平日救世主。季節で:冬はビーフ、夏は野菜中心。
西洋だしの地域差と文化的位置づけ
地域による違い
フランス中部ではポトフ用ブラウンストック、南部はプロヴァンスハーブ多めのブーケガルニ。イギリスは軽いブロス、アメリカは骨ブロスブーム。イタリアのブロドはパスタクッキングに特化。
コミュニティの役割
教会のスープキッチンでストックが支え、共有の象徴。現代では、ウェルネス文化で骨ブロスがSNSで流行。
よくある質問
Q: ストックとブロスの違いは?
A: ストックは骨中心未調味、長時間。ブロスは肉中心調味、短時間。
Q: コンソメの澄ましが失敗したら?
A: 温度を低く保ち、再濾過。卵白の量を調整。
Q: ベジタリアン版はどう作る?
A: きのこやトマトで旨味を。ブーケガルニでハーブ強化。
Q: 保存期間は?
A: 冷蔵3〜4日、冷凍3ヶ月。濾過後急速冷却。
Q: インスタントは使えますか?
A: 緊急時はOKだが、手作りが風味勝る。
まとめ
西洋のだしは、ブイヨンの力強さ、コンソメの繊細さ、ブーケガルニの香りに満ちた、フランス料理の魂ともいえるものです。
日本で言えば鰹節に昆布といったところでしょうか。
本格的なフランス料理の素である一方、シンプルな材料で作れるので興味のある方はぜひキッチンで挑戦を。
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