ゼリーとゼラチン
学生:ゼリー。突然思ったのですがゼリーってなんですか?
先生:突然ですね。ゼリーとは骨や皮などの動物性食品から抽出した、コラーゲン由来のタンパク質の一種を含む物質のことですよ。
そしてこのタンパク質をゼラチンと呼びますが、これがゼリーの特徴である「ゆらぎ」の原因となっています。
学生:つまり、ええっと、ゼリーとはゼラチンを含む食べ物ってことなんですね?
先生:ええ。ほぼその解釈で正しいです。
あまり甘くないゼリーの歴史
食品としてのゼリー
学生:いつ頃から人々はゼリーを食べるようになったのでしょう?
先生:食品としてのゼリーの歴史は何世紀も前にさかのぼりますよ。ゼラチンを使ってゲル状のものを作るという発想は古代の文化に根ざしているからわからないほど昔なんです。
中世にはゼリー料理が流行しましたが、肉類を使った塩味のものが多かったようです。作るのにかなり手間がかかるため、富の証と考えられていたようです。
学生:どちらかといえばデザートの印象だったので意外です。では甘い方のゼリーはいつごろから普及したのでしょうか?
甘いゼリーの誕生 大実業家ピーター・クーパーも関わる
先生:現在のような甘いゼリーが普及したのは、19世紀に入り工業化によってゼラチンが広く普及したことがきっかけです。
学生:凄い最近なんですね!
先生:具体的には1845年に実業家のピーター・クーパーがアメリカで粉末ゼラチンの製造方法の特許を取得したことがきっかけでした。
学生:ピーター・クーパー?
先生:アメリカの大統領候補にもなった凄い実業家ですよ。今でもニューヨークにある少数精鋭のエリート私立大学のクーパー・ユニオンの設立や、蒸気機関車の開発などでアメリカの産業革命を推し進めた、とにかく大人物ですね。
学生:ゼラチンの影にすごい人が。。そして粉末ゼラチンってスーパーマーケットにありますけど昔はなかったんですね。
先生:その通りです。というかスーパーマーケットが出来たのはもっとあとの20世紀に入ってからなのですよ。
その話は置いておいて、その後にニューヨーク州ルロワで大工をしていたパール・B・ウェイトが、クーパーから特許を買いました。
1897年、彼と妻のメイはこの粉末にフルーツフレーバーを加えデザートとして売り出します。そして「ゼリー」と名付けたんです。これが世界で初めて大量生産されたゼラチンデザートだったんですよ。
学生:まだ100年ちょっとの歴史なんですね。
先生:ええ。ただしその100年でしっかり定着したデザートでもあります。
世界のゼリー 日本のゼリー、メキシコのジェラティーナからパンナコッタまで
先生:確かに。。。って夢のないことを言わないでください。そうだ、世界のゼリーについても話しておきましょう。
日本には寒天と呼ばれる伝統的なゼリーデザートがあります。こちらはゼラチンからではなく海藻から作られています。いろいろなデザートによく使われていますね。有名なのはあんこやフルーツや甘い餅がのったあんみつです。それには寒天は欠かせません。そして寒天は羊羹の材料でもあります。
学生:他のアジアのゼリーはどうです?
先生:中国では杏仁豆腐もありますし、中国だけでなく東南アジアでも食べられるライチゼリーなんかも有名どころですね。
中国や台湾、香港では漢方系のも多いんですよね。有名どころでは亀ゼリー、仙草ゼリーなどがあります。見た目は日本の羊羹のような感じですね。
学生:アジアだけでも沢山あるんですね。
先生:また是非見てほしいんですが、メキシコにはジェラティーナと呼ばれる人気のデザートがあります。
一般的な西洋のゼラチンデザートに似ていますが、ケーキタイプの形などより凝った形や層で表現されとても綺麗です。
学生:東洋や他の地域でも独自に発展しているというのは面白いですね。ヨーロッパではどうでしょう?
先生:デザートでいえば、フランスのムースやイタリアのパンナコッタは、普段ゼリーとはいいませんがゼラチン料理ですね。
学生:両方とも食べたことがあります。意外に身近なところで気付かなかったです。
先生:フランスではアスピックといってデザートではなく野菜や肉や魚など、いわゆるおかず系をゼラチンで固めた冷菜料理なんかもありますよ。
学生:序盤で説明していた中世からの歴史を感じますね。奥が深いです。
補足
便利な物質ゼラチン
ゼラチンは哺乳類の腱、靭帯、組織に存在する天然タンパク質であるコラーゲンから得られるタンパク質である。
通常は牛や豚から採取されます。ゼラチンは常温で液体をゲル化させるというユニークな性質があるためそれを活かした料理によく使われます。フランス料理などでデザートでないメニューのところにゼリーのメニューがよくあったりしますが、そちらのが甘いゼリーより歴史の長い料理ともいえます。
ゼラチン自体は無味無臭のため塩味や甘味を問わずさまざまな料理に適しているのです。
デザートだけを考えても甘いゼリーだけでなく、マシュマロ、グミなど、他の多くのデザートの主成分として利用されています。
他にはスープやソースの増粘剤、フランスのゼリー料理であるアスピック料理、ホイップクリームやメレンゲを安定させるためにも使用されます。
ちなみに料理以外に化粧品や写真撮影などにも利用されていて多用途の物質でもあります。