【ドンドゥルム】マラシュアイスクリーム
トルコ版のアイスクリーム、正式名ドンドゥルム、マラシュアイスクリーム。
このいわゆるトルコアイスは独特の食感と弾力性で知られ、しばしば伸びるアイスクリーム、モチモチしたアイスクリームと表現される。食感で言えば世界で恐らく一番変わったアイスクリームである。

まず最初に名称から説明するとドンドゥルムという名前はトルコ語の「アイスクリーム」だ。
そのためトルコでドンドゥルムを食べると普通のアイスクリームとなってしまうのでトルコでトルコアイスクリームを食べたい場合はマラシュドンドゥルムを探そう。
トルコアイスの起源って?
その起源はオスマン帝国に遡ります。トルコのカフラマンマラシュ県にあるマラシュという都市で発明されたと考えられていて、現在も呼ばれる“マラシュ・ドンドゥルマ”という別名の由来となっている。
このアイスについては正確な歴史的起源を特定するのは難しい。
しかしその発展はこの地域で主要な材料が入手できたことと密接に結びついていると考えられている。
なぜならトルコアイスには他のアイスクリームには使われない、サレップとマスティックという2つの材料が必要なのである。

サレップは伝統的にオスマン・トルコ料理でとろみ付けに使われる赤紫の花の球根だ。アイスクリームに使われる以前は人気の飲料材料の代名詞でもあった。見た目はコーヒーのような感じで飲む飲み物だ。
マスティックについても地中海全域で何世紀にもわたって料理や薬用に使われてきた物質である。アイス以外にも色々なスイーツや料理にトルコでは使われる。
それらの材料と、手間のかかる撹拌(かくはん)と引き延ばしのプロセスを含む伝統的な製法、この組み合わせで、今私たちが知っている伸びるモチモチアイスが出来るようになったのだ。
【トルコアイス屋のパフォーマンス】いじわる?うざい?キレる子供も
ドンドゥルムを作る技術は、しばしば演劇的なパフォーマンスとなっている。
ドンドゥルマクと呼ばれる売り子たちはアイスクリームを伸ばしたり、回転させたり、ひっくり返したりする手の込んだショーを行って小さな観光名所のようになっている。
自分も街を歩いていて人が数人集まっていて、最初たこ焼き屋かと思ったらパフォーマンスをしているトルコアイスクリーム屋であった。
なぜかほとんどこのパフォーマンスとセットで売られている。
自分はこのパフォーマンスは好きであるが、受け取り用によっては確かにいじわるでうざいかもしれない。
こちらの子供などは人間不信になってしまいそうだ。笑
トルコアイスはなぜ伸びる? 2つの理由
サレップ コンニャクイモとの共通点
次にサレップとマスティックについて説明していきたい。あまり材料には興味のない方は読み飛ばして下の方に飛んでほしい。
サレップは、ラン属(および近縁属)の塊茎から作られる粉だ。
サレップの化学成分には様々な多糖類が含まれるが、中でも最も重要なのは水溶性食物繊維の一種であるグルコマンナンである。
グルコマンナンは自重の数倍もの水分を吸収する能力があり、ドンドルマの厚くて弾力性のある食感に貢献しているわけだ。
具体的に言うと、グルコマンナンによって形成されるゲル構造が水分を閉じ込め、氷の結晶が大きくなるのを防ぐため、比較的暖かい温度でもアイスクリームの固さが保たれる。
お気づきの方も多いかと思うが日本のヘルシー食品であるこんにゃく。そして蒟蒻ゼリーでも有名なコンニャク芋の主成分は、このグルコマンナンである。
つまり化学的にトルコアイスクリームとこんにゃくは同じ原理で保水作用を出しているのである。
食べるときに歯ごたえで似ているのを確認してほしい。凍らせたコンニャクゼリーなどはトルコアイスとかなり似た食感のはずだ。
トルコと日本は歴史的にずっと仲がいい国同士であるが、食べ物でもおかしな共通点を持っているのである。
マスティック 粘着力の元
一方でマスティックは、ギリシャのキオス島を含む地中海地方原産のマスティックの木(Pistacia lentiscus)から得られる樹脂である。
化学的には、このマスティックガムはテルペノイドと芳香族化合物のポリマー(大容量のつながった分子のこと)を含んでおり、これが特徴的な松のような香りを与える。
アイスクリームに加えると、マスティックは天然の増粘剤として機能し、こちらも噛み応えに貢献する。
その弾力性はその樹脂の性質によるもので、サレップやアイスクリームの他の材料と混ざり合うと、伸縮性を増すわけである。
トルコアイスの作られ方
ドンドゥルムを作るには、まず牛乳を沸騰させ、サレップと砂糖を混ぜる。
この混合物は、ダマができないようにとろみがつくまで絶えずかき混ぜられる。
とろみがついたら、マスティックと追加の香料を加える。
その後、この混合物を専用のアイスクリーム製造機で撹拌するか、大きな金属棒を使って手で撹拌する。この過程で空気が中に入る。撹拌後にアイスクリームは好みの固さになるまで凍らせれば出来上がりだ。
ちなみにオプションでローズウォーター、ピスタチオ、フルーツエキスなどの風味付けを加えることもある。
コツ
調理のコツとしてはサレップが牛乳によく溶けるようにすること、マスティックを細かく砕くことである。これらが全体に均一に分散させることがこの料理の中核的な要素といえる。
また、よく撹拌することで、空気を十分に取り込んで伸びのある軽い食感に仕上げることができる。
撹拌したものをゆっくりと凍らせることも、独特の食感を出すのに役立つ。
アレンジ、そしてトルコアイスの楽しみ方

ドンドゥルマの基本的な材料と作り方はトルコ全土でほぼ同じである。
ただし地域によって独自のアレンジが加えられることもある。
一部地域では風味を変えるために牛乳の代わりにヤギのミルクを使う。ピスタチオの産地に近いトルコ南東部ではピスタチオを使うこともある。
トルコの伝統的なものではないが、チョコレートやバニラのような一般的なアイスクリームの風味を取り入れたものも勿論ある。
それでは最後にトルコアイスクリーム屋のパフォーマンスを最大限楽しんでいる子供で締めくくりたいと思います。
追記:アイスクリームナイフの歴史
トルコアイスは普通のアイスと違いその弾力性から時にはナイフで切って食べることもあります。このアイスクリーム専用のナイフは「ドンドゥルマ・ビチャー」と呼ばれ、なんとオスマン帝国時代から使われてきました。
特殊な形状をしていてアイスをすくい取りやすいように先端が少し広くなっています。これにより伸びるアイスも簡単に切り分けることができるのです。現在ではあまり見かけなくなりましたが、マラシュなどの伝統的な店ではまだ使われていることもあります。
昔はこのナイフを使って皿からアイスを食べるのがマナーとされていて、コーンやカップで食べる習慣は実は西洋から入ってきた比較的新しいものだったりします。
アイスクリーム職人コンテスト
トルコでは毎年「全国ドンドゥルマ職人コンテスト」が開催されています。このコンテストでは伝統的な製法でのトルコアイス作りの技術だけでなく、パフォーマンスの技術や創造性も競われます。
特に人気なのは「最長伸ばしコンテスト」で、アイスをどれだけ長く伸ばせるかを競います。記録によれば、2015年に行われたコンテストでは一人の職人が3.4メートルもアイスを伸ばすことに成功したそうです。こう、文だと一行ですが、ぜひ想像してください。3.4メートルですよ。それほんとうにアイスなんでしょうか。。
またパフォーマンス部門ではいかに観客を楽しませながらも最終的にアイスをきちんと提供できるかというバランス感覚が審査されます。優勝者には「ウスタ(マスター)」の称号が与えられトルコ国内外のホテルやレストランから引く手あまたになるといいます。
トルコアイスの人気フレーバーランキングTOP5
トルコアイスは伝統的なフレーバーから現代的なアレンジまで様々な味わいがありますが現地で特に人気の高いフレーバーをランキング形式で。
第5位:フィスティック(ピスタチオ)
トルコは世界有数のピスタチオ生産国で、特にガジアンテップ地方のピスタチオは最高品質として知られています。ピスタチオの風味を活かしたトルコアイスはナッツの香ばしさと濃厚な味わいが特徴です。
薄緑色の見た目も美しく、アイスだけでなくトルコの高級菓子店などでも定番のフレーバーとなっています。ピスタチオの粒々とマスティックの伸びる食感のコントラストが楽しめるのも魅力の一つでしょう。
第4位:サーデ(プレーン)
シンプルながらも奥深い味わいのプレーンフレーバー。サーデは乳製品の風味を最も強く感じられるフレーバーで、トルコアイスの食感と伸縮性を純粋に楽しめます。
何も加えない分、乳製品の質や配合バランスが味を左右するため、職人の腕が最も問われるフレーバーでもあります。マスティックの松のような香りとサレップの独特な風味を存分に堪能できるのがこのフレーバーの魅力です。
第3位:カカオ(チョコレート)
伝統的なフレーバーではありませんが、ヨーロッパとの交易が盛んだったオスマン帝国時代から取り入れられたチョコレートは今では他の国のアイス事情と同様に定番の味となっています。
カカオの苦みがトルコアイスのもっちり感と絶妙に調和して、独特の味覚体験を生み出します。子供から大人まで幅広い層に支持されているのもこのフレーバーならではでしょう。チョコレートとマスティックの香りのハーモニーも魅力です。
第2位:ギュル(ローズ)
トルコではローズウォーターを使った菓子が多くあり、ローズフレーバーのトルコアイスも大変人気があります。華やかなバラの香りと伸びる食感が組み合わさった優雅な味わいは特に女性に人気のようです。
こちらも実は特産品です。トルコ中部のイスパルタ地方は「バラの谷」と呼ばれるほどバラの栽培が盛んで、ここで採れた最高品質のローズウォーターを使ったトルコアイスは格別の香りを放ちます。淡いピンク色の見た目も美しいフレーバーです。日本だとほとんど食べられないのが残念ですね..。
第1位:カイマック(ミルク)
トルコアイスで最も愛されているのはこのカイマックフレーバーです。カイマックとはトルコの伝統的なクロテッドクリームのことで、ミルクを煮詰めて作る濃厚なクリームです。(クロテッドクリームはアフタヌーンティーなどでスコーンの横にいるのでお馴染みのクリームです)
この濃厚なミルクの風味とトルコアイスのモチモチ感が合わさることで、他のどのアイスクリームにも似ていない独特の美味しさを生み出しています。サレップとマスティックの風味を邪魔せず、むしろ引き立てる最高のフレーバーといえるでしょう。
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ミラブル

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