【比較】世界の肉牛3種【アンガス牛の原産地はアメリカじゃない?】

【比較】世界の肉牛3種【アンガス牛の原産地はアメリカじゃない?】 素材

世界の有名な3種類の肉牛、「アンガス牛」「ヘレフォード種」「シャロレー牛」。

これらは世界的に人気の高い肉牛品種ですが、それぞれどのような特徴があり、どんな料理に向いているのでしょうか。

本記事ではこれら三大肉牛種の特徴産地、最適な調理法までを、アンガス牛を中心に三種それぞれ詳しく解説していきます。

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アンガス牛【原産地はアメリカ?】

特徴と外見

アンガス種は中型の牛で黒色が基本的に多いのが特徴です。赤毛のレッドアンガスも存在しており、どちらもアメリカでは高品質なブランド肉牛として知られています。

自然に角が生えない(無角)品種であるため、飼育時の安全性が高いという利点があります。

こちらの動画を見てもらってもわかるように、体格は他の肉牛種と比較すると比較的コンパクトで、成熟した雄牛の体重は約800〜1,000kg、雌牛は約550〜700kgほどになります。筋肉のつき方が良く、肉の歩留まりが高いことも特徴的です。

肉質に関しては、きめ細かい霜降り(マーブリング)が入り、柔らかくジューシーな食感が特徴です。適度な脂肪分がある一方で、食べ応えもあるため、世界中の食肉市場で高い評価を受けています。

アンガス牛の産地、その歴史

スコットランド起源と世界への拡散

アンガス牛の原産地はアメリカだと思われている方も多いと思いますが、実はスコットランドです。

具体的にはスコットランド北東部のアバディーンシャー州とアンガス州(旧フォーファーシャー州)です。

18世紀後期から19世紀前期にかけて、この地域の農民たちが在来の黒毛牛を改良して現在のアンガス牛を作り出しました。特にヒュー・ワトソンとウィリアム・マッコンビーという2人の畜産家の功績が大きかったようで、彼らの努力により品種として確立されました。

19世紀中期以降、アンガス牛はその優れた肉質と環境適応能力により世界各国に輸出され、現在では世界中で飼育される代表的な肉牛品種となりました。

アンガス牛の主要産地はアメリカへ

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そして御存知の通りアンガス牛が最も成功を収め今や最大の産地となっているのは北米、特にアメリカとカナダです。

1873年にアメリカに初めて導入されて以来、アンガス牛は急速に普及し、現在ではアメリカ最大の肉牛品種の一つとなっています。

特にネブラスカ州、カンザス州、テキサス州、アイオワ州などの中西部から南部にかけての州で大規模に飼育されています。

カナダでもアルバータ州、サスカチュワン州、マニトバ州などのプレーリー地帯で広く飼育されていて、これらの地域の冷涼で乾燥した気候がアンガス牛の飼育に適しているようです。

世界各地での適応

現在、アンガス牛は世界6大陸で飼育されていて各地域の気候や飼育条件に適応しています。

オーストラリアでは、広大な牧場でのびのびと放牧され、高品質なグラスフェッドビーフの生産で知られています。ニュージーランドでも同様に牧草地での飼育が主流で、クリーンで自然な環境で育てられています。南米のアルゼンチンやブラジルでも大規模なアンガス牛飼育が行われており、特にアルゼンチンのパンパス地域は世界有数の牛肉生産地となっています。

アンガス牛は繁殖能力も高く雌牛は約15ヶ月で繁殖可能な成熟度に達することが多いです。

これは他の品種と比較しても早い部類で、畜産農家にとって経済的なメリットとなっているようです。

最適な調理法

アンガス牛の霜降り肉は、シンプルな調理法がもっとも肉本来の味わいを引き出します。グリルやバーベキューで焼いたステーキは、肉の旨味と脂の甘みが絶妙なバランスで楽しめる代表的な調理法です。

特におすすめの料理は以下の通りです

  • ジューシーなステーキ(サーロイン、リブアイなど)
  • ローストビーフ
  • ブリスケット(胸肉の部位を低温でじっくり調理)
  • ハンバーガー(挽き肉の風味が良い)

アンガス牛の脂は融点が低く、口の中で溶けやすいという特徴があります。そのため、中〜レア程度の焼き加減が最も美味しく食べられるでしょう。

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ヘレフォード牛【ホワイトフェイス】

特徴と外見

ヘレフォード種は、白い顔と赤褐色の体が特徴的な中型の肉牛です。見た目の特徴から白顔(ホワイトフェイス)の愛称で親しまれることもあります。一般的にアンガス種と比べて体格がやや大きく、骨格もしっかりしています。

性格はとても穏やかで扱いやすいことで知られており、牧場主からの評価も高い品種です。この温和な気質は飼育管理の容易さにつながり、特に広大な放牧地での群れ飼いに適しています。

肉質については、アンガス種ほどの霜降りではなく、赤身の割合が多いのが特徴です。適度な脂肪と豊かな風味を持つ肉は、しっかりとした食感と深いコクが楽しめます。

歴史と普及

ヘレフォード種は18世紀にイギリスのヘレフォードシャー地方で開発された品種です。元々は農耕用の役牛として飼育されていましたが、その後肉質の良さが認められて肉専用種として改良が進みました。

この品種の大きな特徴は、さまざまな気候や環境への適応力の高さです。厳しい冬の寒さにも強く、粗飼料だけでもしっかり成長できることから、世界中の様々な気候帯へと広がっていきました。

アルゼンチンのパンパ(大草原)からシベリアの大草原まで、多様な環境で飼育されているのは、この品種の持つ驚異的な適応力の証といえるでしょう。また、繁殖性も高く、早熟で良好な受胎率を持つことから、交配プログラムでの利用も一般的です。

最適な調理法

ヘレフォード牛は赤身が多く、風味豊かな肉質であることから、じっくりと時間をかけて調理する料理に最適です。特に以下のような調理法がおすすめです:

  • ポットローストやビーフシチュー(低温でじっくり煮込むことで肉の旨みが引き立つ)
  • ロースト(伝統的なイギリス料理のローストビーフとヨークシャープディング)
  • ブレイズド料理(赤ワインなどの液体で煮込む調理法)
  • ビーフステーキパイ(肉の風味がパイ生地と好相性)

ヘレフォード牛の肉は煮込むほどに旨味が増す特性があるため、じっくり時間をかけた調理がおすすめです。特に冬場の温かい料理には最適な肉質といえるでしょう。

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シャロレー牛【アスリート系の赤身肉】

特徴と外見

シャロレー牛は白またはクリーム色の毛皮を持つ大型の肉牛です。見た目の特徴として、筋肉質で引き締まった体型が挙げられ、成牛になると乳牛として有名なホルスタイン種と同等かそれ以上の大きさになることもあります。

要するにかなり大きめサイズです。

他の肉牛種と比べて、脂肪の少ない赤身肉が特徴で、現代の健康志向に合った肉質を持っています。筋肉量が多い一方で肉質も柔らかく、赤身肉でありながら食感の良い肉として評価されています。

成長速度が比較的速く、短期間で大きく成長するため、効率的な肉牛生産が可能です。この特性は商業的な畜産において大きなメリットとなっています。

歴史と普及

シャロレー牛の原産地は、フランスのブルゴーニュ地方にあるシャロレー地方(またはシャロル地方)です。アンガスやヘレフォードよりも歴史が浅く、主に20世紀に入ってから世界各地に導入された比較的新しい品種です。

元々は役牛(農作業用)として飼育されていましたが、その優れた肉質と成長の早さから肉牛としての価値が認められ、改良が進みました。現在では、ヨーロッパだけでなく、北米や南米、そしてオーストラリアでも広く飼育されています。

特に交雑種の親牛として使われることも多く、他の品種と掛け合わせることで様々な特性を持つ子牛を生み出すことができます。

最適な調理法

シャロレー牛の肉は、赤身が多くヘルシーながらも柔らかい食感を持っていることから、幅広い料理法に適しています。特におすすめの調理法は以下の通りです

  • グリルステーキ(赤身の旨みを直接味わえる)
  • 串焼き(小さく切り分けて香ばしく焼き上げる)
  • ビーフブルギニョン(原産地フランスの伝統料理、赤ワインとの相性抜群)
  • ロースト(シンプルな塩胡椒だけで肉本来の味を楽しめる)

シャロレー牛の肉は脂肪が少ないため、過度な加熱は避け、ミディアムレア〜ミディアム程度の焼き加減がおすすめです。また、調理前にオリーブオイルなどで軽くマリネすると、より柔らかく仕上がります。

肉牛品種の比較と選び方

三大肉牛種の比較表

特徴アンガス牛ヘレフォード牛シャロレー牛
原産地スコットランドイギリスフランス
体色黒または赤赤褐色(白い顔)白またはクリーム色
体格中型中型大型
肉質の特徴霜降り多め、柔らかい赤身と脂肪のバランス良好赤身多め、筋肉質
飼育の特徴無角で安全、早熟おとなしい性格、適応力高い成長が早い、筋肉量が多い
おすすめ料理ステーキ、バーベキューローストビーフ、シチューグリル料理、ビーフブルギニョン
特に優れている点肉質の柔らかさと風味環境適応力と温和な性格赤身の量と成長の速さ

どの肉牛を選ぶべき?用途に合わせた選び方

料理のスタイルや好みによって、最適な肉牛は異なります。以下のような目的別の選び方を参考にしてみてください:

  • ステーキ愛好家:アンガス牛がおすすめです。霜降りの旨味と柔らかさが特徴で、ステーキの定番として世界中で愛されています。
  • じっくり煮込む料理:ヘレフォード牛が適しています。赤身と脂肪のバランスが良く、長時間の調理でも肉の風味がしっかり残ります。
  • ヘルシー志向の方:シャロレー牛が最適です。脂肪が少なく赤身が多いため、低脂肪・高タンパク質の食事を心がける方に向いています。
  • バーベキューやグリル料理:アンガスとシャロレーのどちらも良い選択肢です。前者は柔らかさと風味、後者は赤身の味わいを楽しめます。

肉牛に関するよくある質問

Q: 日本のスーパーでもこれらの肉牛種は手に入りますか?

A: はい、大型スーパーや専門の肉屋では、アンガス牛を中心に輸入牛肉として販売されていることが多いです。

「USアンガス」「CABアンガス」などの表示で見かけることがあります。ヘレフォードやシャロレーはやや少ないですが、高級スーパーや肉専門店では取り扱いがあります。

Q: これらの牛肉と和牛との違いは何ですか?

A: 和牛(特に黒毛和種)は、これら三種と比べて霜降りの度合いが圧倒的に高いのが特徴です。

脂肪交雑(BMS)という基準で測ると、和牛は最高でBMS12まであるのに対し、アンガス種などの外国産牛はBMS5程度が上限となることが多いです。改めてこの点で和牛は圧倒的な数値といえますね。

また、和牛の脂は融点が低いため、実際にとろけるような食感があるわけです。

Q: 肉牛の飼料によって肉質は変わりますか?

A: はい、大きく変わります。穀物肥育(グレインフェッド)された牛は、霜降りが入りやすく柔らかい肉質になる傾向があります。一方、牧草飼育(グラスフェッド)の牛は、赤身が多く、風味が強い肉質になりがちです。

また、グラスフェッドビーフはオメガ3脂肪酸が多いなど、栄養面でも違いがあります。

まとめ

アンガス、ヘレフォード、シャロレーという以上の三大肉牛種は、それぞれに独自の歴史と特徴を持っています。

アンガス牛の霜降りの柔らかさ、ヘレフォード牛の風味豊かな赤身、シャロレー牛のヘルシーな肉質など、品種によって異なる美味しさもあります。

そして料理方法や好みに合わせて牛肉を選び、また、牛さんたちや生産者さんたちに感謝し頂くことで、私達の食文化はさらに豊かになるでしょう。