中国のケーキ 月餅
ある意味で月餅とは中国のケーキである。
そのデザインとかなり濃厚な甘い餡で有名であり食べたことがる人も多いと思う。
最も一般的な餡は小豆や蓮の実の餡で、満月を表す塩漬け卵の黄身、これを丸ごと包んでいることが多いです。
月餅の作り方
ここではあくまでよく見るタイプの一般的な月餅について説明します。
アルカリ水、ラード、小麦粉を混ぜた生地を作り、中にはハスの実などの餡に塩漬け卵黄をいれたフィリングをいれ、文様を彫った木型に詰めて成型します。
そしてオーブンでキツネ色になるまで焼き上げます。月餅の皮は繊細で割れやすく、中身はそのままでなければならないためちょっとした熟練の勘が必要となる工程といえるでしょう
中秋節
中国の暦の中で最も重要な祭りの一つである中秋節に食べるのが伝統的です。日本で言うところのいわゆるお月見ですね。
この中秋節とは旧暦の8月15日(中秋)に秋の収穫を祝い、家族で集まって満月を眺めながら月餅を食べるイベントです。
歴史的には月の満ち欠けが農業とのつながりがあると考えられていたために起きた習慣です。なんと唐の時代の頃からの習慣だと考えられて、今では日本にまで広がっていますが誕生の頃は長安や洛陽といった中国の内陸の大都市で主に発展していきました。
そしてこのときに月餅を贈ることは中国文化における習慣であり、敬意を表し関係を維持するためのものです。
ある意味で日本のバレンタインのように、企業では取引先の会社やパートナーに、個人では家族や友人に月餅を贈るのが一般的といえます。ちなみに月餅については特に先に述べた中秋節発展の地である長安や洛陽ではなく、中国南方の広東などの地域で特に発展した文化といえます。
あまりよくない余談ですが、この習慣は日本での一万円札付きのお万じゅうのような政治家の事件と同じく、高価な月餅が賄賂に使われた例もあってたまに議論を呼んでいたりもするようです。
月餅のデザイン
月餅のデザインには、「長寿」や「調和」を表す漢字や、店の名前、中に入っている具材が描かれていたりします。
また、月やウサギ、不老不死の女神である嫦娥(じょうが)などをモチーフにしたものもあり、中秋節の伝説やテーマと結びついていたりします。
その他幾何学模様のものや模様がないものもあります。
ということで要するにルールは決まっていません。フリーダムです。
肉入り月餅? 表面より多すぎる内面のバリエーション、各地の月餅
何世紀にもわたって中国各地には月餅のバリエーションが生まれました。
例えば、特にバリエーション豊かな広東省の月餅は、瓜の種、ハスの実ペーストからメロンのペースト、ナッツ、また鶏肉、卵黄など、さまざまな具材を入れることがあります。
香港なども広東省に隣接しているため比較的こうしたバリエーションに富んだ傾向があります。
一方、北京の月餅は、繊細で薄い生地で知られています。蘇州の月餅では豚肉が使われたりします。
単純にまとめるならば、一般的に目にするものは広東風月餅の甘いタイプのものという認識でそれを覚えておくだけでいいと思います。
なぜかというと中国は人口も多く、一つの地方の中でも色々な月餅があるのでこれがその地方のだとしぼるのはかなり困難なのです。
つまり月餅はピザくらい多種多様なバリエーションが中国国内だけであるのです。
色も具材も様々で月餅と言われなければ肉まんでは?というものまであります。他に糖分を抑えたもの、ビーガンのもの、抹茶などの餡を入れたものなど、健康志向で独創的な月餅も人気を博しています。
また近年ではアイスクリームやチョコレートなど、現代風にアレンジされた月餅もあります。このように月餅は結局自由な中国風ケーキといえます。
中身は自由、なんなら表面に漢字が書いてなくても別に良い。定義はありそうで実はかなり広めです。
もしかしたらイタリアのカネロニや日本のあんこパンでさえ、中秋節の時期に食べたら広義の月餅といえてしまうかもしれません。