醤油はどこの国のもの?
学生:今日は醤油について教えてください。
先生:もちろんです。日本産の物が有名ですが醤油の歴史は長いですよ。2500年以上前に中国で生まれ、7世紀に仏教の僧侶によって日本に持ち込まれたそうです。
学生:そんなに古いんですか。プラトンや孔子の時代にはもう存在していて、かなり長い間アジアの食生活の一部だったということですね。
先生:そうです。まとめるならば中国生まれで基礎技術が確率されて、その後日本が世界的な醤油というソースの定番の既製品を作ったような感じです。
学生:なるほど。
醤油の工程
先生:そして醤油の製造も興味深いプロセスですよ。
学生:どうやって作るんですか?
まず大豆と小麦、そしてアスペルギルスと呼ばれるカビを混ぜ合わせます。もちろんこのアスペルギルスは種類によっては有害なものです。
醤油づくりには麹菌と分類されるタイプの菌をつかいます。具体的な学名でいうと、アスペルギルス・オリゼーやアスペルギルス・ソジャエというものですね。
学生:麹菌というのは聞いたことがありますがアスペルギルスの、ある種類の名称なんですね。
先生:ええ。そしてこれを数カ月かけて発酵させ、もろみをつくります。
学生:もろみってなんですか?
先生:もろみというのは発酵したどろどろの状態のことをいいます。醤油だけじゃなく同じく発酵食品である、日本酒や味噌の製造の途中でもこのもろみという状態はでてきますね。
学生:なるほど。その後はどうするのですか?
先生:このもろみを圧搾して液体を取り出すわけです。そして殺菌して瓶詰めする。こうして私たちが知っている醤油ができあがるのです。
学生:日常的に塩やコショウのように使いますが、チーズやワインのようになかなか手間や時間がかかるものなんですね。料理にはどのように使われるのでしょう?
濃い口は塩分少ない?たまり醤油って?【日本の色んな醤油】
先生:醤油は料理において非常に多用途に使用できます。
主に風味付けとして使われ、料理に深みと香ばしさ、そしてほのかな甘みを与えてくれます。日本料理では寿司やラーメン、照り焼き、中華料理では炒め物やマリネによく使われますね。
学生:アメリカには日本のキッコーマンというメーカーの醤油がありますよ。日本の醤油についてもっと教えてください。
先生:寿司専用の醤油や刺身用の醤油といったように日本では醤油のジャンルが細分化されています。
キッコーマンは日本でも一番有名ですが、それ以外にもヤマサやヒゲタといった日本で有名な他のメーカーもありますしね。どれも長い歴史があります。
学生:特徴はありますか?
先生:それぞれ色んな醤油を出していて比べるのは難しいですね。会社で比べれば、世界一であり、醤油の代名詞ともいえるキッコーマン、業務用などで強いヤマサ、醤油意外にめんつゆなど他も強めのヒゲタ、みたいな感じですかね。
それに九州にはフンドーキンという九州を代表する醤油メーカーもありますね。
学生:そういえば醤油の種類についても教えてほしいです。濃口醤油や薄口醤油がありますよね?
先生:そうですね。濃い口は一番メジャーなものですよ。通常醤油と言って日本人が使っているのが濃い口醤油です。
薄口は濃い口醤油に発酵した米を入れたものです。色はその名の通り薄いんですが見た目に反してこちらの方が少し塩分は高めです。
学生:濃い口のが濃い色だから塩分が高いかと思っていました。興味深いです。
たまり醤油?刺身醤油?
そうだ、「たまり」というのを聞いたことがありますがなんですか?
先生:たまり醤油ですね。あれは大豆を主原料とし、小麦をほとんど使用しない、熟成期間の長い醤油です。色は濃い口より黒くソースのようです。
たまり醤油以外の他の醤油は大豆と同じくらい小麦が入っています。しかし大豆がほとんどで文字通りソイソースといえるのがたまり醤油です。他の品種に比べ色が濃く味も濃く、濃い口や薄口より塩分が少ないのが特徴です。
学生:色と塩分はここでも反比例なんですね。意外です。
先生:ちなみに刺身醤油というのも日本では有名です。
学生:刺身専用の醤油ですか?
先生:そうです。寿司などにもあうので使われることがありますよ。刺身醤油は昆布やカツオの成分が入っています。
中国の醤油、韓国の醤油って?【カンジャンケジャンって?】
学生:では中国の醤油は日本の醤油とどう違うのでしょうか?
先生:中国の醤油は、日本のものに比べて一般に濃厚で濃い傾向があります。種類も日本と同じく膨大ですよ。
とりあえず3つ紹介しますね。
学生:お願いします。
先生:まず、生抽(シェンチョウ)は日本醤油の濃口醤油に似た色は薄めの醤油です。次に老抽(ラオチョウ)は生抽をさらに熟成させたものです。カラメル色素を加えて作っているため色も濃く、よりコクのある醤油です。日本のたまり醤油に似ていますが、より甘みは強めで粘性も高いですね。
そして醤油膏(ジャオヤオ)。こちらはその老抽をさらに濃縮したかなり濃い色の醤油です。煮込み料理や肉料理の色付けに使われることが多いでしょうか。
学生:とても興味深いですね。
先生:他にも東南アジアのナンプラーに近い海鮮系の醤油や、甘さに特化した甜醤油(ティエンチョウ)などさまざまあります。人口も多く広いため地方ごとに色々な醤油があるのですよ。
学生:韓国の醤油はどうでしょう?
先生:韓国の醤油は「カンジャン」と呼ばれ、やはりそちらも韓国料理には欠かせない存在です。クッカンジャンと呼ばれる日本の薄口醤油のようなタイプと、チンカンジャンと呼ばれる濃口醤油のようなものの2つに大きく分けられますね。
もちろんこの分類の中でさらに、辛口のものや甘口のものと分かれたりするので中国ほどではないにしろさまざまな醤油が韓国にもあります。
学生:日常的な調味料だけにどちらの国も知れば知るほど奥が深そうですね。あと韓国のカニ料理のカンジャンケジャンは醤油のカニってことですね。今わかりました。
まだまだ他の国にも醤油はありますか?
ベトナムやインドネシアの醤油は?【ケチャップマニスも】
先生:代表的なところでベトナムとインドネシアのを挙げておきましょうかね。
ヌック・トゥオン(Nước tương)と呼ばれるベトナムの醤油は、一般的に薄めで甘いです。
なぜなら砂糖や糖蜜が加えられていることが多いからですね。ディップソースやマリネによく使われます。
学生:こちらは甘いんですね。
先生:インドネシアでは醤油は「Kecap」と呼ばれ「ケチャップ」と発音されます。
ケチャップ・マニス(Kecap Manis)」はポピュラーな調味料で、甘く濃厚な醤油にスターアニスやニンニクなどの風味付けをすることが多いですね。
学生:かなりスパイシーで個性が強そうですね。最近日本のスーパーでも見かけるようになりましたが、やはり何より名前に驚きます。
先生:ケチャップですがこちらも醤油の一種ですね。笑
おまけ
【醤油の英語】カタカナでもおなじみのソイソースは凄い変?
大豆はソイ。醤油は英語でソイソース。ソイから作るからソイソース。
では、ありません。
歴史的には江戸時代に日本からヨーロッパへ醤油が輸出されるときに、出島のオランダ商人が醤油を「soja」や「soya」と呼ばれました。
この名称は、日本語、特に九州地域での「醤油」の発音に基づいています。ちなみに長崎からオランダ東インド会社を通じて初めて出荷された際には、醤油が高価な調味料としてコショウなどのように珍重されていました。
そうしたのちに、大豆の英語名である「soybean」がこのsojaやsoyaから派生して生まれます。
ということで18世紀に西洋に紹介された際には「醤油を作るための豆」として名付けられたのです。つまり、「soy」は元々「醤油」を指し、その後大豆がその原料であることから、「soybean」という名称が生まれたわけです。
なので語源から考えれば今の英語のソイソースは醤油ソースというおかしな感じに仕上がっていたりします。
【昔ながらの醤油の作り方】
伝統的な醤油の製造方法は、何世紀にもわたって洗練されてきた緻密なプロセスを含んでいます。主に日本の「本醸造」技法が知られており、自然発酵と高品質の材料を重視しています
- 材料の準備: 大豆を蒸して柔らかくし発酵の準備をします。小麦は焙煎して砕き、風味を高めます。これらを混ぜて発酵の基礎を作ります。
- 麹の作成: 蒸した大豆と砕いた小麦に特定のカビ(通常はAspergillus oryzaeまたはAspergillus sojae)を接種し、2〜3日間発酵させて「麹」を形成します
- もろみの作成: 麹を塩水と混ぜて「もろみ」を作り数ヶ月から数年にわたって発酵させます。この間に乳酸菌や酵母が風味をさらに豊かにしてくれます。
- 圧搾: 発酵が完了したら、もろみを布で包んで圧力をかけ、液体の醤油を抽出します
- 加熱処理と精製: 生醤油を加熱して品質を安定させ、色と香りを高めます。その後、残留物を除去して瓶詰めします
醤油の作り方の工程【現在】
現代の醤油製造技術は伝統的な方法と革新的な技術を組み合わせて進化しています。主な製造方法は上記のとほぼ変わらない発酵と、酸加水分解です
- 発酵法: 高品質の醤油生産者の間で依然として一般的です。二段階の発酵プロセスを含みます。
- 麹の生産: 大豆を蒸し、小麦を焙煎して混ぜ、特定のカビで接種します。この混合物は数日間発酵し、旨味を引き出します
- もろみの発酵: 麹を塩水と混ぜて「もろみ」を作り、数ヶ月から数年発酵させます
- 圧搾と加熱処理: 発酵後、もろみを圧搾して生醤油を抽出し、加熱処理を行います。
- 酸加水分解法: 需要に応えるため、酸加水分解を採用するメーカーもあります。この方法は生産時間を数日間に短縮しますが、発酵による複雑な風味は得られません
- ハイブリッド技術: 発酵と酸加水分解を組み合わせた技術もあり、コスト効率と伝統的な風味のバランスを取る方法です。
このように現代の醤油製造技術は効率を高めつつ品質を維持することを目指して伝統的な発酵方法と革新的な技術を融合させています。