【ケーキ】ケーキの発祥 ザッハトルテに月餅も?【パート1】

【ケーキ】ケーキの発祥 ザッハトルテに月餅も?【パート1】 ヨーロッパ

現代の私たちが食べているふわふわで装飾豊かなケーキは、実は長い歴史を経て進化してきたものです。古代の素朴な「甘いパン」から現代の芸術的なケーキまで、歴史を紐解きつつ月餅などまで含め世界各地のケーキ文化を探ってみましょう。

ケーキの起源と歴史的発展

Chinese-people-eating-mooncakes-under-the-full-moon 【ケーキ】ケーキの発祥 ザッハトルテに月餅も?【パート1】

古代のケーキの形

先生:今回はケーキについて。まずケーキの由来から説明しましょう。ケーキの語源は、古ノルド語の「カカ」です。

学生:サッカー選手みたいですね。古代のケーキはどんなものだったんです?

先生:古代ではケーキは蜂蜜で甘くした丸い平たいパンで、ナッツをトッピングすることもありました。古代ギリシャではチーズケーキのようなものが作られ、ローマでは小麦や大麦を使った基本的なケーキにナッツや蜂蜜、ドライフルーツを混ぜたものが知られています。

ローマ人は小麦や大麦にナッツや蜂蜜、ドライフルーツを混ぜたベーシックなケーキを作り、神への捧げものにもしていたそうです。

学生:思っていたのと随分違いました。甘いパンみたいな感じですね。

古代のケーキは、現代のようなふわふわした食感ではなく、どちらかというと硬く平たい菓子だったと考えられています。エジプト人も早い時期からはちみつを使った甘い菓子を作っており、壁画にその様子が描かれているという証拠もあります。当時は砂糖が貴重だったため、甘味料として主に蜂蜜が使われていたのです。

中世から近代へのケーキの進化

先生:そうですね。さて時代は進み中世ヨーロッパ。この時代、ケーキ作りが立派な職業になりました。パン職人のギルドが設立され、さまざまな種類のケーキが試されるようになったのです。砂糖や小麦粉がより精製されるようになると、より軽く、より多様なケーキが作られるようになりました。

18世紀にはベーキングパウダーが発明され、ケーキ作りが一段と進化しました。さらに軽くてふんわりとしたケーキができるようになり、現在の私たちにもなじみのあるケーキになりました。

学生:私たちが今食べているケーキは、何世紀にもわたる進化の結果なんですね。

先生:まさにその通りです。特にベーキングパウダーの登場はインパクトが大きいですね。

中世になると、ヨーロッパでは砂糖の輸入が増え、富裕層の間で甘いお菓子が人気を集めるようになりました。ケーキは特別な行事や祝祭の日に食べられるご馳走として位置づけられていましたが、まだまだ現代のようなふわふわした食感とは程遠いものでした。

16〜17世紀になると、バターやクリームなどの乳製品を使ったケーキが登場し始め、より豪華な味わいになっていきます。そして、18世紀に開発されたベーキングパウダーの登場が、ケーキを大きく変えるターニングポイントとなりました。これにより、生地に空気を含ませやすくなり、現代のような軽くてふわふわとした食感のケーキが誕生したのです。

世界の有名なケーキとその文化的背景

ヨーロッパの伝統的ケーキ

先生:そしてケーキはお祝いやセレモニーのシンボルになっています。誕生日や結婚式、記念日など、さまざまな場面で食べられますよね。今回はそんな現代のケーキの代表的なものをいくつかご紹介しましょう。ザッハトルテをご存じですか?

学生:聞いたことはあります。チョコのケーキですよね?

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先生:そうです。ザッハトルテは1832年にオーストリアのフランツ・ザッハーが発明したチョコレートケーキ(トルテ)の一種です。ウィーンの名物料理として有名ですね。私も実際にウィーンで食べましたがとても濃く甘い味付けです。

またお隣のドイツにも有名なチョコケーキがあります。チョコレート、チェリー、生クリームの組み合わせで知られるドイツの「ブラックフォレストケーキ」、こちらもチェリーの甘い酸味がいいアクセントになっています。

学生:うーん、どちらも食べてみたいですね。

ヨーロッパには地域ごとに特色ある伝統的なケーキがあります。イタリアのティラミスは、エスプレッソで湿らせたビスケットとマスカルポーネチーズのクリームを重ねた軽い食感のデザートで、「元気づける」という意味の名前通り、心を明るくしてくれる味わいです。

フランスでは、バタークリームを何層にも重ねた「ミルフィーユ」や、軽やかなスポンジケーキをゼリーとクリームで包んだ「フランボワーズ」などが有名で、芸術的な美しさも兼ね備えています。フランス料理の繊細さと美学がケーキにも表れているといえるでしょう。

アジアのケーキ文化と独自の発展

学生:そういえばアジアのケーキはどうなんですかね?

先生:いい質問をありがとう。アジアのケーキは、西洋のケーキとはまったく異なりますね。焼くのではなく、蒸すものが多く、米や豆などの食材を使うものもありますよ。

学生:なんと。

先生:例えば中国では中秋節に「月餅」を食べますが、あれは西洋から見ればケーキのカテゴリーですね。月餅は小豆や蓮の実のペーストが入った丸いお菓子で、月を象徴する塩漬け卵黄が入っていることが多いです。

また、日本では、短粒のジャポニカ米で作られた餅があります。これは「餅つき」と呼ばれる儀式で作られる伝統的なものです。

学生:お餅、食べたことあるんですけどおいしいですよね!あれもケーキですか?

先生:ライスケーキですね。小麦粉を使ったものだけがケーキではないです。そしてベーキングパウダーもすでに述べたようにケーキの必須要素ではありませんからね。

学生:確かにそういわれるとそうですね。

先生:大豆の粉末と黒糖のソースをかけたきなこ餅などは形こそ違いますがザッハトルテのような濃厚さだと思います。ヨーロッパの視点でいえば日本の三重の有名なあんこで餅を包んだおみやげ、赤福なども立派なケーキですね。

学生:赤福は夏の赤福のかき氷や、冬のおしるこバージョンも好きです。

先生:赤福については何やら私より詳しそうですね。。。

ちなみにアジアのケーキは西洋とは異なる原材料や調理法で発展してきました。

韓国の餅菓子「トック」、マレーシアやインドネシアの蒸しケーキ「クエ」、フィリピンのココナッツミルクケーキ「ビビンカ」など、地域ごとに特色ある菓子が伝統的に作られてきました。

近年ではアジアでも西洋式のケーキが人気を集めていますが、日本のようにショートケーキを独自にアレンジしたり、抹茶やゆずなど地元の素材を取り入れたりと、東西の良さを融合させた新しいケーキ文化が生まれています。特に日本の「クリスマスケーキ」文化は、西洋の伝統を取り入れながらも独自の発展を遂げた興味深い例といえるでしょう。

ケーキにまつわる興味深いエピソード

歴史的誤解と文化的象徴

先生:それで思い出しましたがここでトリビアです。「パンがなかったらケーキを食べたら?」という言葉は、マリー・アントワネットの言葉として広く知られていますが、彼女が言ったという確証はないのを知っていますか?

学生:とんだ名誉棄損ですね…。私が知っているマリー・アントワネットの唯一の言葉でしたよそれは。

先生:歴史の教科書でもお馴染み、社会契約論で有名なフランスの哲学者ルソーのかなり有名な「告白」という本が原因と言われているんです。その中である王女の話が出てくるのですが、その王女がパンがなければブリオッシュでいいじゃないと言ったのが、のちになぜかマリーアントワネットに置き換わって広まったと考えられていますよ。

学生:王女がマリーアントワネットなんじゃないんですか?

先生:本の出た時期から見て関係ない上に、歴史的なことをいえばフランスに嫁いできて外交的な大変革を起こす、オーストリア、の王女がマリーアントワネットです。

学生:ルソーのいるフランスに来ているときは王女ではないですね。待ってください、あと先ほどブリオッシュと言っていましたよね?あれってケーキですか?

先生:いや、勿論ケーキじゃないですよ。バターが多めのパンです。

学生:何一つあってないじゃないですか。。

先生:もちろんルソーはオーストリア王女のマリーアントワネットを批判する文脈でもないですよ。何も悪気ないのに勝手に解釈されてしまってマリーアントワネットもルソーも不憫ですよね。

学生:ひどい話だ。そして今思えばこのトリビアはケーキに関するものじゃなかった。

このエピソードは、歴史的事実が時に誤解され、変化していく様子を示す興味深い例です。ブリオッシュは確かにケーキではなく、砂糖やバターをたっぷり使った豪華なパンですが、当時の庶民には高級品でした。このような誤解は歴史上よくあることで、時にはそれが定着して「通説」になってしまうこともあるのです。

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ケーキと文学

先生:その通りです。紙面を割いたものの実はパンのトリビアでした。文学や映画ではケーキはしばしばお祝いや転機を象徴するものです。不思議の国のアリスでアリスがケーキを食べて成長する重要なシーンなどもありますね。

学生:無理矢理トリビアみたいのを言わなくても大丈夫ですよ。。

ケーキは文学や映画など芸術作品でも重要な役割を果たしてきました。ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」では、「EAT ME(食べてね)」と書かれたケーキを食べたアリスが巨大化するシーンがあり、子供から大人へと成長する隠喩とも解釈されています。

また、マルセル・プルーストの「失われた時を求めて」では、紅茶に浸したマドレーヌ(ケーキの一種)の味が主人公の記憶を鮮やかによみがえらせるという有名な場面があります。

これは「プルーストの記憶」として心理学でも参照される現象で、味や香りが過去の記憶を鮮明に思い出させる力を持つことを示しています。専攻は違うのですが、フランス文学の講義を私は学生時代取ったことがあるのですがこの失われた時を求めてのマドレーヌシーンはこの有名小説の中でも有名シーンで講義2回に渡り勉強した個人的に感慨深いところです。

そして現代でも、映画「マリー・アントワネット」(2006年)では、ソフィア・コッポラ監督がファッション雑誌のようなビジュアルで王妃の贅沢な暮らしを描き、色とりどりのケーキやお菓子が象徴的に使われています。

学生:また、マリーが。史実なのかフィクションなのか怪しいけど少しかわいそう。。

ケーキに関するよくある質問

Q: ケーキとパイの違いは何ですか?

A: 基本的な違いは、ケーキが小麦粉・卵・砂糖などを混ぜて作った生地を焼いたものであるのに対し、パイは薄い生地(パイ生地)で具材を包んで焼き上げたものです。

ケーキは通常ふんわりとした食感ですが、パイはサクサクとした食感が特徴的です。ただし、チーズケーキのように両方の特性を持つものもあります。

Q: 世界で最も古いケーキのレシピは?

A: 現存する最も古いケーキのレシピのひとつは、古代ローマの料理書「アピキウス」に記されている蜂蜜とチーズを使ったケーキです。

紀元1世紀頃のものとされています。また、エジプトやメソポタミアの遺跡からも、蜂蜜やナッツを使った古代のケーキの存在を示す証拠が見つかっています。これから先発掘などで更新されるかもしれませんね。

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