インドネシアの米料理といえば ナシゴレン
インドネシア料理の代表格であるナシゴレン。その誕生は炊き込みご飯の誕生と重なります。
そして余った米を無駄にしないための解決策でもある。インドネシアの家庭では食べ物を無駄にしないという原則のもと、残った米をスパイスや肉、野菜と炒めることでこの料理として再生させる。
インドネシア語で「ナシゴレン」は、「ナシ」はご飯、「ゴレン」は炒めるで炒めご飯である。
そう聞くと炒飯が浮かんだ人がいるかもしれない。実際、中国は北部は小麦、南部は米が有名である。海を挟んでいるがインドネシアは幾つかの海峡で中国南部とは行き来できる地理関係にある。中国のチャーハンと文化的なつながりがあるとも一部では考えられている。
中国のチャーハンとはどちらが先かも分からないが、少なくとも多くの人がナシゴレンとチャーハンは全く別の料理と感じるはずである。
米を炒める、エビをよく使う、これらの特徴以外はほとんど調味料も材料も別なのだ。そしてナシゴレンには付け合わせもつく。
また一般に使う材料はチャーハンより多いと言えるだろう。
現状の食べられている範囲
現在この料理は1万7000以上の島々からなるインドネシア、スマトラ島の国ブルネイ、マレーシア、シンガポールをはじめとする東南アジアに浸透しています。
また、植民地時代の歴史的な関係から、オランダの食卓にも登場するなど、その魅力は海外にも広がっている。
ナシゴレンの調理
料理法は完全に定まったものがあるというのではなく家庭によっても異なる。場合によっては何世代にもわたってレシピが受け継がれる身近な定番料理なのである。
それでも一般に伝統的なレシピにはチキンやエビなどのタンパク質と、ニンジンやキャベツなどの野菜が含まれている。そしてナシゴレンの核ともいえるのは、エシャロット、ニンニク、塩、タマリンド、唐辛子、パームシュガー、ナンプラーなどを混ぜ合わせたスパイシーなペーストにあるといえるかもしれない。
付け合わせとしては、揚げたエシャロットやキュウリのスライス、海老のクラッカー、また、サンバル(辛味調味料)などが挙げられる。
もしかしたら余計かもしれないけれど一応補足として。
エシャロットはにんにくのような風味のあるネギ、タマリンドは酸味づけによく使われるマメ科の果実、パームシュガーはパーム、つまりヤシの樹液から精製した砂糖である。
かなり多様な地域差 パエリアみたいなナシゴレンも
ナシゴレンは地域によってかなりの違いがある。まずはスマトラ島、正確には西スマトラ州パダン地方のナシゴレン・パダン。
パダン料理のサンバルというチリソースの辛味を取り入れ、スパイスを強めに効かせた味わいだ。卵が具材に使われることも多い。
一方でジャワ島のナシゴレン・ジャワは、甘みを好むジャワ人の味覚を反映し、甘めの味付けになっている。ケチャップマニスという甘口の醤油のようなソースが使われる傾向にある。ナシゴレンといえばナシゴレンジャワというくらいにインドネシアで最も一般的なナシゴレンでもある。
また、ヒンドゥー教が盛んなバリ島では、新鮮な海の幸をふんだんに使ったナシゴレン・シーフードもある。他の地域のナシゴレンと同じように使われるエビだけでなく、ムール貝やあさり、イカなど様々なシーフードが使われる。
味付けについてはレモンやライムなどの柑橘系のしぼり汁を使用する。地中海から遥かに離れた太平洋の料理であるが、発想としてはほとんどパエリアである。
ということで、このように地域によってその土地の味覚や食材、文化的、時には宗教的なニュアンスを反映していると言えなくもない。
海に隔てられているインドネシアだからこその多様性がこの料理にも出ているといえるだろう。
オバマ元大統領も好き
幼少期をインドネシアで過ごしたオバマ元大統領は、しばしばナシゴレンを好んで食べている。
そしてそれによってこのインドネシアの料理をより多くの国際的な人々に紹介することができました。
また、2018年には世界的有名シェフのゴードン・ラムゼイがナシゴレンの調理に挑戦したことで、この料理の正しい調理法について論争が起きつつも、その人気と文化的意義がさらに強調された。
しばしば料理のランキングを発表しているアメリカのCNNは、インターネット上のアンケートによってランキングを発表した。そしてナシゴレンが「世界で最もおいしい食べ物」の世界第2位と選ばれたことも最後に書いておきたい。
ナシゴレンの具材【買い物用に追記】
基本の具材
ご飯
ナシゴレンの土台となるのは冷ご飯です。
特にジャスミンライスが推奨されます。
冷やしたご飯は水分が少なく、炒める際にパラパラとした理想的な食感を保てます。新鮮なご飯よりも前日の残りご飯を使うのが一般的。
肉類
鶏肉が最も一般的で、特に鶏もも肉や鶏ひき肉が使われます。
インドネシアはイスラム教徒が多いため豚肉より鶏肉が好まれますが、バリ島などでは豚肉も使用されます。
小さくカットするかひき肉にすることで、ご飯との一体感が増し調味料が染み込みやすくなります。
シーフード
エビは欠かせない具材で、むきエビや干しエビが使われます。
干しエビは少量でも強烈な旨味を放ち、炒めることで香ばしさが引き立ちます。沿岸部では魚介類のミックスが使われることもあります。
野菜
玉ねぎやエシャロットは炒めることで甘みが増し、スパイシーな調味料とのコントラストを生みます。
ピーマンやパプリカは色鮮やかで、シャキッとした食感とほのかな甘みを加えます。トマトは酸味とジューシーさを提供し、全体の味を軽やかにします。その他、にんじん、インゲン、キャベツなども地域により使われます。
卵
ナシゴレンスペシャルでは半熟の目玉焼きをトッピングするのが定番です。
黄身を崩してご飯と絡めるとクリーミーなコクが加わります。ご飯と一緒に炒め込んでスクランブルエッグのように混ぜ込む場合もあります。
調味料
サンバル
唐辛子、にんにく、エビペーストを炒めたチリソースでピリ辛の風味を加えます。
ナシゴレンの特徴的なスパイシーさを演出する重要な調味料です。
ケチャップマニス
甘い醤油で、キャラメル風味の甘辛さがナシゴレンの特徴的な味わいを作ります。
醤油と砂糖を混ぜることで代用可能です。
エビペースト
発酵させたエビのペーストで、強烈な旨味とスモーキーな香りを与えます。
本場のナシゴレンに欠かせない独特の風味の源です。
その他の具材、トッピング
カシューナッツ
香ばしさとカリッとした食感を加え、高級感を演出します。
レストランやちょっとクオリティーの高いナシゴレンでは必須かも。
クルプック
これはエビや魚の揚げせんべいですね。
サクサクの食感と塩気を加えます。本場のナシゴレンにはこれもほぼ必須のトッピングです。
付け合わせ
きゅうりやトマトのスライス、アチャール(野菜のピクルス)、パクチーなどが添えられ、スパイシーなナシゴレンの重さを和らげ、全体としてバランスの取れた食事にします。

