パフェは世界中で愛されている甘いデザートですが国によってその姿かたちは大きく変わります。フランスで誕生した「完璧な」デザートがどのように進化し、各国で独自の発展を遂げたのか。
エレガントなフランスのオリジナルから豪快なアメリカンスタイル、さらには日本独自の芸術的パフェまで、会話形式でパフェの歴史を紹介します。
パフェの起源と語源から見える魅力
「完璧」を意味する名前の由来
先生:パフェという言葉はフランス語で「完璧な」という意味なんですよ。この名前がついた理由は想像できますか?
学生:見た目の美しさからでしょうか?それとも味の完成度が高いからとか。
先生:どちらも正解です。パフェという名前には見た目の美しさと味わいの両方が完璧であるという意味が込められています。フランスでは1894年頃に誕生した冷菓の一種で、当時のパティシエたちが「これぞ完璧なデザート」と考えたことからその名前がついたんですよ。
学生:130年以上も前からあるんですね!想像以上に歴史があります。てっきり最近のデザートだと思っていました。
先生:多くの人がそう思いますよね。実はパフェの歴史は意外と古く、19世紀末のフランスのパティスリーで生まれました。当時は今のようなSNSでの拡散もなかったので、各地域に広がるのに時間がかかったんです。
本場フランスのパフェとは
先生:フランスの伝統的なパフェは現代の日本やアメリカで見るものとはかなり違います。生クリーム、卵、砂糖、シロップを煮込んでカスタード状のピューレを作りそれを生クリームと混ぜて凍らせたものなんです。
学生:え?アイスクリームに近いものなんですか?日本でよく見るグラスに入った層状のものとはだいぶ印象が違いますね。
先生:そうなんです。フランス発祥のパフェはどちらかというとアイスクリームに近いものでした。フルーツのコンポートを添えたりしますが日本やアメリカの「層になっている」イメージとは大きく異なります。フランスでは今でもこのスタイルのパフェが本格的なパフェとして認識されていますよ。
学生:へえ、本場と言われるフランスのパフェが最も知られていないというのは皮肉ですね。いつか本場のパフェも食べてみたいです。
先生:機会があれば試してみてください。アイスクリームよりも滑らかで卵のコクが際立つ味わいは別格ですよ。実はフランスでもアメリカ風や日本風のパフェを「パルフェ・アメリカン」や「パルフェ・ジャポネ」として提供するお店も増えているんですよ。
アメリカと日本のパフェスタイル徹底比較
アメリカンパフェの特徴と進化
先生:アメリカでは20世紀初頭にフランスのパフェとは異なるスタイルが生まれました。背の高いグラスに何層もの食材を盛り付けるスタイルです。
学生:それが今の「パフェ」のイメージですよね。どんな具材を使うんですか?
先生:アメリカのパフェは主にアイスクリーム、ジェラート、ホイップクリーム、ヨーグルト、プリンなどを基本にグラノーラやナッツ、フルーツなどの層を交互に重ねていきます。ソーダファウンテンの文化と結びついて発展したんですよ。
学生:ソーダファウンテン?それは何ですか?
先生:1900年代初頭から中頃にかけてアメリカで大流行した炭酸飲料やアイスクリームなどを提供する店舗やカウンターのことです。そこでは様々なアイスクリームデザートが考案されていてパフェもその一つでした。今のカフェの前身みたいなものですね。
学生:そうか、アメリカの若者文化と一緒に発展したんですね。となると、アメリカのパフェは当時の若者向けのカジュアルなデザートだったんですか?
先生:その通りです。当時のアメリカでは映画館の近くにソーダファウンテンがあることが多く、映画を見た後にパフェを食べるという文化がありました。デートスポットとしても人気でしたよ。
学生:なるほど。アメリカでは映画文化とパフェ文化が結びついていたんですね。その文化は今も続いているんですか?
先生:残念ながら伝統的なソーダファウンテンは減少傾向にありますが、最近ではレトロブームでまた人気が復活しつつあります。「Happy Days」や「Grease」のような古い映画に出てくるダイナーやソーダファウンテンを再現したお店も増えてきていますよ。
日本独自のパフェ文化とアレンジ
先生:日本のパフェはアメリカのパフェに影響を受けていますが、独自の進化を遂げています。特にここ20年ほどで急速に発展した日本のパフェ文化は世界的に見ても特異なものになっています。
学生:日本のパフェってどんな特徴があるんですか?
先生:日本のパフェはアメリカのパフェと同じく層状に重なっていますが、使われる具材がより多様です。アイスクリームやフルーツ、生クリームは共通していますが、そこにコーンフレークなどのシリアル、さらに和菓子やケーキ、時には抹茶やあずきなど和の素材まで入れることがあります。
学生:確かに、ケーキが丸ごと入っているパフェを見たことがあります。あれって日本独自のものなんですね。
先生:そうなんです。特に2010年代以降、「インスタ映え」を意識した超豪華なパフェが次々と登場しました。数千円もする高級パフェや、「シェアして食べる」ことを前提にした巨大パフェも日本独自のものといえるでしょう。
学生:そういえばYouTubeで3.5キロの巨大チョコレートパフェの動画を見たことがあります。あれは確かに日本のものでした。食べきれるのかなと心配になりましたが…
先生:あはは、確かにデカ盛り料理の中でも本当に大きい部類ですからね。それにしても日本のパフェ職人は「味」だけでなく「見た目」にもこだわる点が特徴といえます。
まるで盆栽のように細部まで計算された美しさがあるんですよ。中には「パフェ専門店」まであってそこではパフェだけを提供する店もあるほどです。
伝説のシェフとパフェの世界
エスコフィエが残した究極のパフェレシピ
先生:パフェの歴史を語る上で忘れてはならないのが「料理人の王、王の料理人」と呼ばれたフランスの伝説的シェフ、オーギュスト・エスコフィエです。
学生:エスコフィエ?フランス料理のレジェンドですよね。パフェも作っていたんですか?
先生:そうなんです。エスコフィエは20世紀初頭、高級料理界で賞賛されるパフェを数多く生み出しました。特に彼のイチゴのパフェ「パルフェ・オ・フレーズ」は傑作と称えられていました。
学生:エスコフィエのパフェはどんなものだったんですか?今のパフェとは違うのでしょうね。
先生:彼のパフェは今のような層状のものではなく先ほど説明したフランス伝統のアイスクリーム風のパフェです。しかし、その味わいは極めて繊細で、王侯貴族を唸らせるほどでした。彼は新鮮なイチゴのピューレを使い、バニラや時にはシャンパンなどでフレーバーを加え滑らかな口当たりにこだわっていました。
学生:高級レストランのデザートだったんですね。シャンパン入りのパフェって贅沢ですね!
先生:当時のパフェは今のように気軽に食べられるものではなく特別な場で楽しむ高級デザートでした。エスコフィエの料理本『料理の手引き』には数種類のパフェレシピが掲載されていますよ。実はフランスではパフェは今でも高級デザートというイメージが強いんです。
学生:日本やアメリカではカジュアルなイメージですが、発祥の地フランスでは高級デザートなんですね。文化の違いって面白いです。
先生:その通りです。デザートの社会的位置づけが国によってこれほど変わるのはパフェならではかもしれません。ちなみにエスコフィエは様々なデザートに有名人の名前を付けることでも知られていました。例えば「ピーチメルバ」はオペラ歌手ネリー・メルバにちなんで命名されたものです。桃のメルバということです。
ポップカルチャーとパフェの意外な関係
先生:パフェの人気に貢献したのは高級料理人だけではありません。ポップカルチャーも大きな影響を与えています。特に映画「シュレック」に登場するロバのキャラクター、ドンキーの名セリフは有名です。
学生:あ、知ってます!「パフェは、この地球上で一番おいしいものかもしれない」というやつですよね。変に印象に残るセリフでした。
先生:一部の界隈ではこの一言がアメリカでのパフェ人気を再燃させたとも言われているようです。映画公開後、アメリカの多くのレストランでパフェの注文が増えたという話もあるんですよ。
学生:影響力。。でもドンキーの言うとおり、パフェって本当に自分の好きなものが詰まったビュッフェみたいなものですもんね。
先生:うまい例えですね!「好きなものをすべて一つの器に詰め込んだデザート」という点で、パフェは確かに究極のデザートといえるかもしれません。実はパフェが再び注目されるきっかけはほかにもあって、SNSの普及も大きいんです。特に写真映えするパフェは「インスタグラム映え」する投稿として世界中で人気になりました。
学生:確かに!パフェって見た目が派手で色鮮やかだからSNS映えしますね。特に日本の芸術的なパフェは外国人に人気がありそうです。
先生:おっしゃる通りです。今では「日本のパフェを食べること」が外国人観光客の観光目的の一つになっていると言われるほどです。特に京都や北海道のパフェは評判が高いですよ。
世界三大パフェ文化の比較と特徴
「パフェの三様」比較表
先生:ここでフランス、アメリカ、日本のパフェの特徴を比較してみましょう。それぞれのパフェスタイルには明確な違いがあります。
学生:一覧にするとわかりやすそうですね。どんな違いがあるんですか?
先生:大きく分けると形状、主な材料、食べ方、価格帯などに違いがあります。簡単な比較表にまとめてみましょう。
国 | 主な形状 | 主な材料 | 文化的位置づけ |
---|---|---|---|
フランス | 凍らせたクリーム状 | 生クリーム、卵、果物ピューレ | 高級デザート |
アメリカ | グラスに層状 | アイス、ヨーグルト、ベリー類 | カジュアルなカフェデザート |
日本 | より装飾的かつ層状 | アイス、フルーツ、ケーキ、和菓子 | カジュアルなファミレスやカフェのデザート |
学生:なるほど。フランスではもともとアイスクリームのような形だったんですね。でも日本のパフェが一番複雑そうです。
先生:その通りです。日本のパフェは「進化系パフェ」とも言えるでしょう。日本人特有の「既存の文化を取り入れてさらに発展させる」という国民性が表れているかもしれませんね。
世界各国のユニークなパフェバリエーション
先生:実はパフェの種類は三カ国だけではありません。世界中に独自のパフェ文化が広がっています。
学生:他にもあるんですか?どんなパフェがあるんですか?
先生:例えばイタリアには「コッパ・ジェラート」というパフェのようなデザートがあります。ジェラートをベースに、ナッツやソースを重ねたものです。メキシコには「バナナスプリット」があり、これもパフェの仲間と言えるでしょう。
学生:へえ、知らなかったです。東南アジアとかにもありそうですね。
先生:鋭い指摘です!タイには「トゥッティム・クロップ」という赤い水、氷、白玉のようなもの、ココナッツミルクなどを層にしたデザートがあります。フィリピンの「ハロハロ」も氷やフルーツ、豆などを混ぜたパフェ的なデザートですね。
学生:暑い国ではやっぱり冷たいデザートが発達するんですね。どれも食べてみたくなります!
先生:そうですね。実は「層になったデザート」は世界中に存在していて、それぞれの国の食文化や気候に合わせて進化してきたんです。韓国の「パッピンス」もその一種と言えるでしょう。これはかき氷の一種ですが最近ではフルーツやアイスクリームを載せた豪華なものが多く、パフェに近づいています。
まとめ:パフェ文化の今後の展開
先生:19世紀末にフランスで生まれたパフェは約130年の歴史の中で驚くべき進化を遂げてきました。フランスの伝統的なパフェからアメリカのカジュアルな層状パフェ、そして日本の芸術的なパフェへと変化してきたんです。
学生:同じ名前でもまったく別物になっているのが面白いですね。これからパフェはどう進化していくと思いますか?
先生:良い質問ですね。おそらく今後は「ヘルシーパフェ」や「サステナブルパフェ」といった健康や環境に配慮したパフェが増えていくでしょう。実際ヴィーガンパフェや低糖質パフェなどは既に欧米で人気が出始めています。
学生:確かに健康志向は強くなってますからね。でも豪華なパフェの魅力は失われてほしくないです。
先生:その気持ちよくわかります。おそらく二極化が進んでいくでしょうね。日常的に食べる「ヘルシーパフェ」と、特別な日に食べる「アート系豪華パフェ」といった感じで。
学生:なるほど。パフェって単なるデザートを超えて、時代や文化を反映する食べ物なんですね。今度パフェを食べるときは、その歴史や文化的背景まで意識してみます!
先生:それは素晴らしい視点です。食文化を知ることで何気なく食べているものの奥深さに気づけますよね。デカ盛りのパフェもエスコフィエのような洗練されたパフェもそれぞれの魅力があります。機会があればぜひ世界各国のパフェを食べ比べてみてください。
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